特別対談 本橋良祐医師×小林知彦社長(株式会社メディカルユニバース)

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「よく見える」をもたらすメガネの大切さ

2023年、本橋眼科クリニックでは、本院の移転・リニューアルと併せて、院内にメガネ店を併設しました。「『よく見える』の総仕上げはメガネ」の考えのもと、90年以上の社業をベースにする株式会社メディカルユニバース(豊島区)の協力を得ています。今回、「よく見える」のためにメガネがどれだけ大事なのかを、同社の小林知彦代表と本橋良祐医師が語り合いました。

小林知彦社長(左、メディカルユニバース)と本橋良祐眼科医(右)

 

メガネは医療器具

良祐医師 今年の3月から、「船橋メガネコンタクト」を院内でご開業いただいています。ベテランで安心感のある前沢孝明さんと中堅でフットワークの良い布田雄介さんの二人の眼鏡作製技能士にご勤務いただき、患者さまからも好評です。

小林代表 良祐先生のご友人の眼科医からご紹介いただき、今回のご縁となりました。信頼していただいてのご紹介ですので、私たちとしても誇らしいです。二人には、責任を持って業務に当たるよう指示しています。

良祐医師 技術や知見のある方でないと大切な患者さまをご紹介できません。実力のある御社にご協力いただけ、我々もほっとしているところです。

小林代表 ありがとうございます。当社はもともと1931年に山形県で創業したメガネや時計を扱う店で、現在では、眼科クリニック内でのメガネ販売を全国約40カ所で行っています。北は岩手県、南は鹿児島県まで展開しているため、東京に拠点を設けて分社化したのが「メディカルユニバース」です。

良祐医師 私の曽祖父母もメガネ、時計を扱う店を経営していました。そこで「見える」の大切さを知った祖母が眼科医になり、父、私にと引き継がれています。小林社長も4代目とのことで、親近感を覚えます。

小林代表 社業が長いことの利点は、技術、経験、そして理念がしっかり受け継がれることだと思います。当社は創業以来、「メガネは医療器具」という原点を大切にしてきたのですが、本橋眼科クリニックが「『よく見える』のために」をモットーにしていると聞き、とても共感しました。

良祐医師 特に昔の人は、見えないことで職業上の制限を受けたりもしたので、「見える」ことの大切さを痛感しているのでしょうね。

小林社長が今おっしゃった通り、本来、メガネというのは医療器具なのですよ。ですから当院としては、本音としては、メガネを作るところまで見届けたいのです。しかし、そこは職人の世界なので、軽々しくは口を出せない。その壁を超えるために、今回御社に入っていただき、眼科医・眼鏡作製技能士・患者さまのトライアングルでメガネを仕上げていける態勢を作りました。

本橋良祐眼科医

苦手を解消し、快適な生活へ

良祐医師 もっとも、「医療器具」だと意識して、メガネに義務感を感じるのは良くありません。メガネは、歩行を楽にする杖と一緒です。人間の目には得意と苦手な距離があるので、その人の苦手な距離に対しては、「見える」を補う〝杖〟を使えばいいのです。つまり、メガネですね。苦手な距離は人によって違うので、ヒアリングをしながら、その人にとって一番必要な視力をメガネでもたらすことが重要です。

小林代表 その点では、本当は、普段用、読書用、運転用など、メガネを数本持ってほしいですよね。洋服は何着も持っていらっしゃるのに、メガネは1本という方がほとんどです。

良祐医師 これだけ一日中長く一緒に過ごす道具もないのですけどね。

小林代表 皆さんがよく知る遠近両用レンズが象徴的ですが、遠くを見るときと近くを見るときでは、必要な度数は異なります。メガネ1本だけで全部をこなせるというものではないのです。

良祐医師 しかも、一口に読書といっても、その姿勢は人によってさまざまでしょう? 姿勢よく読む人もいれば、文字に顔をくっつけるようにして読む人もいる。だから理想をいえば、いつもの読書姿勢で視力測定をし、読書用のメガネを作れればいいのですが、ほとんどの場合は「視力が弱い」というご相談に対処するので、一律の距離での測定になります。その結果を元にメガネを作るから、「なんとなく私に合わない気がする……」という不満につながってしまうのですね。

小林代表 メガネ店の立場としては、眼科医の処方箋を無視するわけにはいきません。しかし、ヒアリングするなかで、「この度数では、この方のライフスタイルには合わないのではないかな」と思うことはあります。クリニック内に店舗があれば、眼科医との連携がスムーズになり、「この方の読書姿勢はこのようなものなので……」と測定から見直していくこともできる。患者さまご自身にも、クリニック・メガネ店を何度も往復する必要がないので便利なはずです。

良祐医師 目とメガネの両面から「よく見える」を作り上げていくということですね。これからの時代は、両者が連携していくことが大事です。

小林代表 「メガネを作ろう」となると、すぐに町中のメガネ店に行く方が多いですが、実は我々の本音としても、眼科医に診てもらってほしいというのがあります。視力低下の原因には病気が隠れているケースもありますが、それはメガネ店では判別できませんから。

小林知彦社長

 

常時300本を在庫

良祐医師 とはいえ、クリニック内で必ず買わなければいけないということではありません。行きつけのメガネ店がある方もいるでしょうし、フレームにこだわりがある方もいるでしょう。フレームは、何本くらいあるのでしたっけ?

小林代表 常時在庫しているのは約300本です。フレームのご指定があれば、物によっては取り寄せも可能です。ただ……、スタイル重視の海外ブランドものなどは扱っていません。基本的には日本製です。日本製は壊れにくくて、日本人の顔に合うのですね。

良祐医師 私などは、外国製のメガネだと、まつ毛がずっとレンズに触れてしまいます。

小林代表 特に鼻の形が、欧米向けデザインのものは違うのですよね。それも含めて外国製のほうが良いという声もあるので、最終的には好みで選べば良いと思います。

私たちの役割としては、お客さまが選んだフレームをその方のお顔に合うようにフィッティングしていくことになります。最近はフィッティングをしないメガネ店もありますが、基本的にメガネは、掛ける人に合わせて微調整することが必要です。例えば私自身も、右と左の耳の高さが違うのですね。だから、フィッティングをしないと、メガネがずれてしまう。快適に使用していくには、フィッティングが非常に重要です。

良祐医師 まさに職人芸ですよね。

小林社長 視力は器械でも測れるのですが、フィッティングは感覚的なものがあるので経験が重要ですね。

眼鏡作製技能士の二人

 

コンタクトの注意点

良祐医師  また、コンタクトユーザーの方にぜひ知ってほしいことがあります。最低でも一本はメガネを持ち、コンタクトレンズと併用して使用してほしいということです。というのも、コンタクトレンズの長時間の使用は、感染症や目の痛み、ハードレンズの場合は眼瞼下垂(※)のリスクが高まるからです。

小林社長 度数とカーブさえ決まれば通販でも買えるということもあり、コンタクトレンズだけでメガネは持っていない、という方も少なくないですね。

良祐医師 先ほどメガネをシーンに合わせて2、3本は持ってほしいという話をしましたが、その一本がコンタクトレンズ、という考え方をしてほしいと思います。コンタクトレンズの使用イコール当然メガネも持っている、というのが眼科医の考えです。

小林社長 私からはメガネのメンテナンスについて最後にお伝えしたいです。一般に、メガネの買い替えサイクルは3年から4年と言われています。レンズ表面のコーティングが薄くなったり、フレームも弱くなってくるので、定期的にメガネをチェックし、適宜買い替えをご検討いただきたいです。

良祐医師 目の定期健診と合わせてメガネもチェックしていただけると良いのかなと思います。そして、「よく見える」の総仕上げがメガネやコンタクトレンズであるということを、患者さまにぜひともご理解いただきたいと思います。患者さまには、クリニックとメガネ店が連携していることを上手にご活用いただきたいですね。

対談の様子

 

【プロフィール】

小林知彦・こばやしともひこ 全国で31店舗を展開する「めがねのコバヤシ」(本社・山形県)の4代目社長。1996年に、クリニックと連携するメガネ販売業「株式会社メディカルユニバース」創業。2023年3月、本橋眼科クリニック内に「船橋メガネコンタクト」を開業した

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本橋良祐・もとはしりょうすけ 東京医科大学医学部卒業、東京医科大学病院勤務、西東京中央総合病院眼科部長などを経て、2021年、もとはし眼科院長就任。現在、本橋眼科クリニックにて主に手術を担当する

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